エイジフレンドリーとは？企業が取り入れるべき制度・メリット・助成金情報

少子高齢化が進む日本では、60歳以上の労働者がますます増えています。
企業にとっても「高齢社員が働きやすい職場づくり」は避けて通れない課題です。
そこで注目されているのが 「エイジフレンドリー」 という考え方です。

この記事では、エイジフレンドリーの意味や企業が取り入れるべき制度、導入によるメリット、さらに活用できる助成金情報まで詳しく解説します。

エイジフレンドリーとは？

「エイジフレンドリー（Age Friendly）」とは、
年齢に関係なく誰もが働きやすい環境を整える取り組み
のことです。
もともとはWHO（世界保健機関）が提唱した「エイジフレンドリーシティ」の概念から広まりましたが、日本では特に職場環境の改善、雇用制度の整備を意味することが多いです。

なぜ今エイジフレンドリーが必要なのか

総務省統計局の2024年の調査によると、労働人口の約4人に1人が60歳以上という高齢化が進んでいます。

さらに企業では人手不足が深刻化しており、定年延長や再雇用制度の普及によって高齢者の雇用はますます一般的になっています。

こうした背景から、企業が高齢者にとって働きやすい職場を整備することは、人材確保と生産性向上を同時に実現するための戦略的な取り組みといえるでしょう。

参考資料：労働力調査（基本集計）　2024年（令和6年）平均結果

企業が実践するエイジフレンドリー取り組み例

物理的環境の改善

・工場や倉庫での段差解消やバリアフリー化
・作業場の照明改善で視認性を高める
・重量物を運ぶためのリフト・昇降機を導入

勤務制度の柔軟化

・短時間勤務や週3勤務などの選択肢を用意
・再雇用制度を整備し、定年後も働ける仕組みをつくる
・テレワークやシフト希望制度の導入

スキルアップ支援

・デジタル機器の操作研修を実施
・安全衛生教育を定期的に実施
・メンター制度で若手と高齢社員のコミュニケーションを促進

エイジフレンドリーを導入するメリット

エイジフレンドリーな職場づくりは、単なる福利厚生の強化ではありません。
企業の人材戦略や生産性向上に直結する施策です。
ここでは、導入することで得られる主なメリットを紹介します。

人材不足解消と経験活用

深刻化する人手不足の中、60歳以上の労働力は貴重な戦力です。
エイジフレンドリーな環境を整えることで、

・定年後も働き続けたいシニア層が定着
・熟練社員のノウハウを若手へ継承
・採用コストの削減

といった効果が期待できます。
経験豊富な人材が残ることで、ミスの削減や教育コストの低減にもつながります。

生産性と従業員満足度の向上

作業環境の改善や負担軽減装置の導入は、単に高齢社員のためだけではありません。 若手社員や女性社員にとっても働きやすい職場となり、全体の生産性が向上します。

・転倒・腰痛などの労災リスクが減る
・作業効率が改善され残業削減にも貢献
・身体的・精神的負担の軽減でモチベーションが向上

結果として、離職率の低下や採用力の向上にもつながります。

企業イメージとESG経営への貢献

高齢者が活躍できる職場は、社外からの評価も高まります。
特に近年注目されているESG（環境・社会・ガバナンス）経営の観点からもプラスになります。

・SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に貢献
・投資家や取引先からの信頼向上
・採用広報において「シニアに優しい会社」として差別化可能

社会的責任を果たしながら企業価値を高める一石二鳥の施策といえます。

エイジフレンドリー助成金を利用しよう

エイジフレンドリー助成金とは？

エイジフレンドリー助成金は、厚生労働省が実施している助成金制度で、
高齢者が働きやすい職場環境づくりを行う中小企業を支援するためのものです。
職場の設備改善や安全対策、健康維持の取り組みなどにかかる費用の一部が補助されます。

対象となる企業と条件

対象となるのは、以下の条件を満たす中小企業です。

・常時雇用する労働者数が中小企業の範囲内（業種ごとに基準あり）
・高年齢労働者（60歳以上）が1人以上雇用されている
・安全衛生委員会を設置している、または安全衛生管理体制が整っている
・申請前に取り組み計画を作成し、計画に沿った設備導入・改善を行う

※詳細な条件は年度ごとに変更される場合があるため、申請前に厚生労働省または各都道府県労働局の最新情報を確認する必要があります。

支給対象となる取り組み例

補助対象になる取り組みは多岐にわたります。例えば：

1.設備・装置の導入
・作業負担を軽減する機器（昇降装置、補助リフト）
・転倒防止マット、滑り止め床材の設置
・作業場の照明改善
2.健康・体力維持支援
・ストレッチ指導や運動指導の外部講師費用
・健康診断の追加項目の実施費用
3.安全教育・研修
・高齢者向け安全衛生教育の実施

支給額と補助率

・補助率：経費の1/2（中小企業の場合）
・上限額：1事業場あたり最大100万円（年度ごとに変動する可能性あり）

申請の流れ

1.取り組み計画の作成
→事業場ごとに実施計画を作成し、労働局へ提出
2.実施・完了報告
→計画に沿って職場改善を実施し、報告書・領収書などを提出
3.審査・支給決定
→書類審査を経て、問題なければ助成金が支給されます

申請時の注意点とよくある不支給理由

エイジフレンドリー助成金を申請する際には、いくつか注意が必要です。
まず、計画を提出する前に購入した設備は対象外となるため、必ず事前に申請を済ませてから導入する必要があります。
さらに、領収書や証拠書類に不備があると不支給となる可能性が高く、改善効果が認められない設備、たとえば単なる更新や修理と見なされるものも助成の対象にはなりません。
また、申請期限は年度末に集中する傾向があるため、余裕を持って早めに準備を進めることが重要です。

他の助成金との併用

エイジフレンドリー助成金は、他の安全衛生関連の助成金と併用できる場合があります。
しかし、同じ経費について重複して受給することはできないため、どの費用をどの助成金に申請するかを計画段階でしっかり整理しておく必要があります。

エイジフレンドリー対策をするには？

エイジフレンドリーな職場づくりには、転倒・労災防止や健康管理など具体的な対策が欠かせません。
工場や倉庫ではレイアウト見直しや手すり設置、床の滑り止め加工で転倒リスクを減らし、誰にとっても安全な職場を実現します。加えて、AIカメラの導入は、転倒や異常行動を自動検知し遠隔地からも状況把握ができます。インカムと連携すれば同時に複数人へ通知でき、対応力が向上。
これらの対策は高齢社員の安心だけでなく、現場全体の安全性と生産性を高めます。

転倒防止対策としてのレイアウト変更工事

VALTECが運営するオフィス空間デザインでは、工場や作業場所のつまずき防止のための手すり設置や床の改装など、店舗や作業場のレイアウトの改善をご提案します。

転倒対策ができるAIセキュリティカメラシステム

転倒してしまった、もしくはその気配のある作業員を発見したら、ウェアラブルカメラや一人作業現場にカメラを設置することでいち早く報告、また映像を映しながら適切な処置を仰ぐこともできます。

インカムアプリと連携して、カメラからアラートが上がったら、すぐに関係者へ一斉連絡することも可能です。

まとめ｜エイジフレンドリーは企業と社員の双方にメリット

エイジフレンドリーは、企業にとって単なる福利厚生ではなく、 人材確保・生産性向上・企業価値向上につながる重要な戦略です。

さらに、厚生労働省の「エイジフレンドリー助成金」を活用すれば、 費用負担を抑えて職場改善を進めることができます。

早めに計画を立てて申請し、 高齢社員がいきいきと働ける職場を実現しましょう。