2025年9月9日
近年、保守点検業務における安全性・効率化・人手不足対策の切り札として注目されているのが「ウェアラブルカメラ」です。
鉄道・電気・上下水道・製造業など、さまざまな現場で導入が進み、遠隔支援による作業品質の維持や、点検記録の自動化・教育への活用といった効果を上げています。
従来の点検業務では「現場と本部の情報共有に時間がかかる」「熟練者が同行しないと判断が難しい」「作業記録の作成が負担になる」といった課題がありました。
しかし、ウェアラブルカメラを導入することで、現場映像をリアルタイムで共有しながら指示が可能になり、報告書作成やエビデンス取得も自動化。結果として、作業の安全性向上とコスト削減が同時に実現できるのです。
本記事では、【2025年版】保守点検におけるウェアラブルカメラの活用法をテーマに、わかりやすく解説していきます。
目次
ウェアラブルカメラとは、作業者の体や頭部に装着して、両手を自由に使いながら映像や音声を記録・配信できる小型カメラのことです。
保守点検業務の現場では、作業しながらリアルタイムで状況を共有できるため、安全性の確保や効率的な業務遂行に役立ちます。
・メガネ型
普段の保護メガネに近い感覚で装着でき、違和感が少ないタイプ。視線の動きと映像が一致するため、作業内容をそのまま共有しやすいのが特徴です。軽量で長時間の使用に向いています。
・ヘッドマウント型
ヘルメットや頭部に取り付けて使用するタイプ。現場作業で広く使われており、安定した視点映像が得られます。耐久性・防塵防水性能を備えたモデルも多く、屋外や高所作業に適しています。
・胸部装着型(ボディカメラ)
作業着の胸ポケットや専用ベルトに装着するタイプ。視野はやや固定されますが、動きに強く、安定した映像を長時間記録できます。バッテリー容量が大きいモデルが多いのも利点です。
・撮影機能:高画質映像や広角レンズで現場の状況を的確に記録
・通信機能:Wi-FiやLTE/5Gを使って映像をリアルタイム配信、遠隔支援を可能に
・録画保存:本体やクラウドにデータを保存し、点検記録や報告書作成に活用
このように、ウェアラブルカメラは種類によって特徴が異なるため、利用シーン(高所作業、長時間点検、遠隔臨場など)に合わせた選定が重要です。
ウェアラブルカメラは、点検業務の現場で幅広く活用されています。特に以下のようなシーンで導入効果が大きく、すでに多くの事例が出ています。
橋梁や鉄道施設の点検では、高所や狭所での作業が避けられません。作業員がウェアラブルカメラを装着することで、作業中の視界をリアルタイムに本部へ共有でき、安全管理者やベテラン技術者が遠隔から状況を確認・指示することが可能になります。これにより、危険エリアでの無駄な同行を減らし、作業の安全性と効率を両立できます。
電気設備や工場機器の点検では、トラブル発生時の迅速な対応が求められます。 ウェアラブルカメラを活用すれば、現場の若手技術者が作業を行いながら、遠隔の熟練者が映像を見てアドバイスできるため、品質を落とさずに点検を進められます。設備管理会社やビルメンテナンス業務でも導入が進んでいます。
災害時の復旧作業や事故現場での緊急対応では、刻一刻と状況が変化します。ウェアラブルカメラを装着すれば、現場の被害状況を即時に共有でき、迅速な判断と指示につながります。また、映像を記録することで、後日の原因分析や報告資料作成にも活用できます。
地方自治体や公共団体が行う橋梁・下水道などの点検業務でも、ウェアラブルカメラは有効です。
遠隔臨場によって専門家が現場に行かずに状態を確認できるため、移動や待機の時間を削減し、効率的な維持管理が可能になります。さらに、点検記録を映像で残すことで、監査や住民説明にも活用できます。
阪神電気鉄道では、電気設備の点検や高所作業にウェアラブルカメラを導入しました。作業員が装着したカメラの映像を本部にリアルタイムで共有できるため、現場に同行しなくても状況確認や指示が可能になりました。
これにより、高所作業の安全性向上、教育利用、記録の効率化など多面的な効果を実現しています。
熊本県玉名市役所では、橋梁の点検にウェアラブルカメラを活用。現場からの映像を遠隔で確認する「遠隔臨場」を取り入れることで、専門技術者が現場に出向かずに点検を行えるようになりました。
その結果、移動や待機の時間削減、点検業務の効率化、エビデンスとしての映像記録が可能になり、限られた人員でも質の高い維持管理を実現しています。
製造業の工場設備点検で、産業機器メーカーA社では設置工事、アフターサービスといった幅広い業務にウェアラブルカメラが活用されています。作業員がカメラを装着して点検することで、管理職と映像を共有しながらトラブルシューティングが可能。
その結果、出張コストの削減、報告業務の効率化、作業品質の向上につながり、若手スタッフ1名でも現場対応できる体制が整いました。
保守点検の現場に適したウェアラブルカメラを選ぶ際には、用途(遠隔支援・記録・教育・長時間稼働など)や環境(高所・屋外・屋内)を考慮することが重要です。
ここでは、2025年時点で特におすすめできる4機種をご紹介します。
製品名 | 特徴 | 耐久性 | 通信・録画管理 | メリット |
---|---|---|---|---|
VALTEC ウェアラブルカメラ![]() |
IP電話メーカーが開発したウェアラブルカメラ。最高レベルの防水・防塵性能 | IP68 -20~60℃ |
LTE/Wi-Fi・AES暗号化・顔認証 | 映像、音声を複数名共有、通話アプリを起動させて内線・外線通話が可能。導入支援や保守体制も充実 |
Safie Pocket2 Plus 製品サイト>> |
小型・軽量で持ち運びやすい | IP67 -20~50℃ |
LTE/Wi-Fi・クラウド録画 | 映像記録をそのままエビデンス化、コストパフォーマンス良好 |
RealWear Navigator シリーズ 製品サイト>> |
ヘッドマウント型で両手が自由 | IP66 MIL規格 |
Wi-Fi/LTE・大容量ストレージ | 作業中のハンズフリー支援に最適、海外導入実績多数 |
Xacti LIVE 製品サイト>> |
クリップ型で高画質・堅牢設計 | 一般耐久 | Wi-Fi/LTE・手振れ補正 | 記録性と画質を重視した現場に最適 |
ウェアラブルカメラを保守点検業務に導入する際には、製品性能だけでなく、実際の運用環境に合っているかを確認することが重要です。以下のポイントを押さえておくと、失敗のない選定につながります。
現場からのリアルタイム映像共有には、安定した通信環境が欠かせません。
・屋外インフラ点検や移動を伴う業務:LTE/5G対応モデルが有効
・屋内や工場内の定点利用:Wi-Fi環境で十分対応可能
事前に点検エリアの通信状況を確認し、必要に応じてSIMやルーターを併用するのが安心です。
長時間の点検や巡回作業では、バッテリー切れが大きなリスクになります。
・短時間点検(1〜2時間):小型軽量モデルでOK
・長時間点検(半日以上):交換可能バッテリーや外部バッテリー対応モデルを推奨
「稼働時間」と「充電方法(USB給電可否)」を事前に確認しておきましょう。
屋外や工場内など、厳しい環境で使用するケースが多い保守点検業務では、耐久性が必須です。
・防塵・防滴(IP54〜55程度):一般的な工場やオフィスビル点検向け
・高耐久(IP66〜68、防爆仕様):プラント、橋梁、鉄道など過酷な現場に対応
導入前に現場環境と必要な耐久性能を照らし合わせましょう。
ウェアラブルカメラは映像・音声を記録するため、個人情報や企業機密の取り扱いに注意が必要です。
・保存先のセキュリティ(クラウド利用時の暗号化・アクセス制御)
・記録データの管理体制(誰が閲覧できるか、保存期間の設定)
・労働者や現場関係者への周知(撮影の事前説明・同意)
適切なルール整備と社内教育を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
保守点検業務は、人手不足やコスト増、技術継承といった課題を抱えています。その解決策としてウェアラブルカメラは「DXの第一歩」となり得ます。
導入により得られる効果は以下の通りです。
・遠隔支援による安全性・作業品質の向上
・点検記録の自動化・エビデンス取得
・教育や技術継承への活用
・出張・移動コストの削減
まずは自社の点検業務に合ったカメラを選定し、試験導入から始めるのがおすすめです。