【2026年義務化】カスハラ対策は企業の必須科目へ!法改正のポイントと今すぐやるべきこと完全ガイド

2025年6月10日

カスタマーハラスメント

この記事を読むとこんなことがわかります

  • 2026年中に義務化されるカスハラ対策の背景
  • 相談窓口・研修・再発防止体制など義務化までに必要な企業の対応
  • カスハラ対策で得られる6つのメリット
  • カスハラ対策に使える奨励金・補助金

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はじめに:いまカスハラ対策が企業の重要課題に

昨今、「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」による従業員への精神的負荷や退職リスクが企業にとって深刻な問題となっています。
2025年3月、カスハラ対策を事業主の義務とする改正労働施策総合推進法案が閣議決定され、2026年中の施行が見込まれています。
これまで多くの企業が、従業員個人の対応力や忍耐に頼る形で、この問題と向き合ってきました。しかし、その限界は明らかです。そして今、国が大きく動こうとしています。

2026年を目途に、企業に対する「カスハラ対策」が、ついに法律で義務化される見通しとなり、これまで努力義務に留まっていた企業の姿勢を根本から変える、大きな転換点です。本記事では、この法改正の背景から、企業に具体的に何が求められるのか、そして義務化に向けて今すぐ何を始めるべきかまで、4000字を超えるボリュームで徹底的に解説します。

「まだ先の話」と先延ばしにするか、「今から準備を始める」かで、企業の未来は大きく変わります。従業員を守り、持続的な成長を遂げるために、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「カスハラ(カスタマーハラスメント)」とは何か?

対策を講じる前に、まずは敵の正体、つまり「カスハラ」とは何かを正確に理解する必要があります。

厚生労働省は、2022年に公表したマニュアルの中で、カスハラを以下のように定義しています。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

少し難しい表現ですが、ポイントは以下の2点です。

  • 要求内容の妥当性: 要求している内容そのものが、社会の常識から見て理不尽であること。(例:購入していない商品の交換を要求する)
  • 手段・態様の不相当性: たとえ要求内容に一部妥当性があったとしても、その伝え方や手段が社会通念上、許される範囲を越えていること。(例:大声で怒鳴る、机を叩く、長時間居座る)

そして、これらの行為によって「労働者の就業環境が害される」状態が、カスハラと判断されます。

カスハラの具体的な行為類型

具体的には、以下のような行為がカスハラに該当すると考えられています。

行為の態様具体例
身体的な攻撃殴る、蹴る、物を投げつける
精神的な攻撃脅迫、中傷、侮辱、名誉毀損、暴言、人格否定
威圧的な言動大声で怒鳴る、机を叩く、長時間居座る、従業員を睨みつける
継続的・執拗な言動何度も同じ内容で電話をかける、SNSで執拗に誹謗中傷する
要求内容が不相当な言動土下座の要求、金銭の不当な要求、自社製品・サービスの無償提供の強要
時間的・場所的拘束長時間にわたり従業員を拘束する、自宅や職場に押しかける
性的言動容姿に関する不必要な発言、性的な冗談、食事へのしつこい誘い

これらの行為は、従業員の心に深い傷を残し、メンタルヘルス不調や休職、最悪の場合は離職へと繋がります。そしてそれは、企業にとっても生産性の低下、ブランドイメージの毀損、新たな人材採用コストの増大といった、計り知れない損失となるのです。

これまでも、カスハラ問題は存在していました。なぜ今、国は法改正に踏み切ったのでしょうか。その背景には、いくつかの複合的な要因があります。

  1. 社会問題としての深刻化と世論の高まり
    SNSの普及により、悪質なクレームが可視化されやすくなりました。店員を土下座させる動画が拡散されたり、特定の企業や従業員への誹謗中傷がエスカレートしたりする事例が後を絶ちません。こうした状況を受け、「従業員を守るべきだ」という社会的なコンセンサスが形成されてきたことが、最大の推進力です。
  2. 労働者保護の観点(安全配慮義務の拡大解釈)
    企業には、従業員が安全で健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」が課せられています。従来、この義務は職場内のパワハラやセクハラが主な対象と考えられてきました。しかし、顧客からのハラスメントであっても、それによって従業員の心身の健康が脅かされる以上、企業は使用者として保護措置を講じるべきである、という考え方が司法や行政の場で一般的になってきました。
  3. 既存の法規制「パワハラ防止法」からの流れ
    現在の法律(改正労働施策総合推進法、通称:パワハラ防止法)では、職場におけるパワーハラスメント対策は、大企業・中小企業を問わず、すでに全事業主の義務となっています。

一方で、顧客などからの著しい迷惑行為(カスハラ)については、事業主は「相談に応じることその他雇用管理上の配慮や、被害者への配慮のための取組を行うことが望ましい」とされ、努力義務に留まっていました。

今回の法改正は、この「努力義務」を「義務」へと格上げし、パワハラと同様に、企業がカスハラ対策に組織的に取り組むことを法的に明確に位置づけるものです。これにより、対策の実行力と実効性を飛躍的に高める狙いがあります。

なぜ「2026年義務化」が注目されるのか

改正労働施策総合推進法では、すべての事業主に対し、以下の措置を講じることが義務化されます。

対象 事業主に求められる措置
相談窓口設置 被害相談の受理と適切な対応体制を整備
抑止対策 カスハラ防止の社内ルールや研修を実施
再発防止措置 被害時のケアや対応フローの整備
不利益取扱い防止 相談者への不当な処分を禁止
従業員教育 全従業員への啓発・注意喚起の実施

また厚生労働省は、2026年中の施行を目指し、詳細を規定する「指針」を策定予定です。
無視できない法改正であるため、今すぐ準備を始める必要があります。

カスハラ対策義務化の背景と社会意義

① 労働者保護の観点

従業員が理不尽な言動にさらされることによって、精神的ストレス、健康被害、離職につながるリスクがあります。
企業は「安全配慮義務」を負っており、その一環としてカスハラ対策も法の対象になりました。

② パワハラ・セクハラに続くハラスメント対策強化

従来はパワハラ・セクハラへの対応が進められていましたが、カスハラも同等の被害を招いていることから、法整備が進んでいます。
2025年10月から東京都では独自条例も施行されており、社会的な流れが加速しています。

【法改正で何が変わる?】企業に求められる具体的な措置とは

2026年からの義務化で、企業には具体的にどのような措置が求められるのでしょうか。詳細は今後の政省令で定められますが、基本的には現在義務化されているパワハラ防止措置の内容がベースになると考えられています。

企業が必ず講じなければならなくなる措置は、以下の4つの柱からなります。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
    • 何をすべきか?:
      就業規則や服務規律等に「カスタマーハラスメントを一切容認しない」という方針を明確に規定する。
      カスハラの定義や、どのような行為が禁止されるのかを具体的に明記する。
      この方針を、社内報、ポスター、イントラネット、研修などを通じて全従業員に周知・啓発する。
    • ポイント:
      経営トップが自らの言葉で、従業員を守るという強いメッセージを発信することが、何よりも重要です。
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    • 何をすべきか?:
      カスハラの相談窓口をあらかじめ設置し、従業員に周知する。
      窓口担当者が、相談内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。(対応マニュアルの作成、研修の実施など) 相談は面談だけでなく、電話やメール、オンラインでも受け付けられるようにするなど、相談しやすい環境を整える。
    • ポイント:
      「相談しても無駄だ」「自分が我慢すればいい」と従業員に思わせない、信頼される窓口を構築することが鍵となります。
  3. 事後の迅速かつ適切な対応
    • 何をすべきか?:
      相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認する。
      事実が確認できた場合、被害を受けた従業員への配慮措置(メンタルヘルスケア、配置転換の検討など)を速やかに行う。
      行為者である顧客に対して、組織として毅然とした対応(注意、警告、サービスの提供拒否、警察への通報、弁護士への相談など)を行う。
      再発防止策を検討し、実施する。
    • ポイント:
      被害に遭った従業員を一人にせず、会社が「盾」となって守る姿勢を具体的に示すことが求められます。
  4. プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止
    • 何をすべきか?:
      相談者のプライバシー保護のために必要な措置を講じ、その旨を従業員に周知する。
      従業員がカスハラの相談をしたことや、事実関係の確認に協力したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する。
    • ポイント:
      安心して声を上げられる環境がなければ、問題は潜在化してしまいます。プライバシー保護と不利益取扱いの禁止は、制度を機能させるための大前提です。

【義務化に備える】今すぐ始められるカスハラ対策アクションプラン

「2026年までまだ時間がある」と考えるのは危険です。効果的な対策の導入には、相応の時間と準備が必要です。ここでは、今すぐ着手できる具体的なアクションプランを6つのステップでご紹介します。

STEP1:経営トップによる「断固たる宣言」
全ての始まりは、経営トップの強い意志表示です。「我が社は、従業員の人格と尊厳を守る。いかなるハラスメントも許さない」というメッセージを、朝礼や社内報、公式サイトなどを通じて社内外に明確に発信しましょう。この宣言が、今後のすべての取り組みの拠り所となります。

STEP2:社内規程・マニュアルの整備
就業規則の改定: 「職場のハラスメントの禁止」に関する規定に、顧客等からのハラスメント(カスハラ)も対象であることを明記します。
カスハラ対応マニュアルの作成:
カスハラの定義と具体例
対応の基本姿勢(傾聴、共感、ただし毅然と)
初期対応の手順(担当者レベルでできること)
エスカレーションの基準(どのような場合に上司や専門部署に報告するか)
記録の取り方(5W1Hを正確に)
警察や弁護士との連携手順

STEP3:相談窓口の設置と周知徹底
人事部内、あるいはコンプライアンス部門などに専門の相談窓口を設置します。外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスを活用するのも有効な手段です。そして、その窓口の存在と連絡先、利用方法を、ポスターやカードなどで全従業員がいつでも確認できるように徹底して周知します。

STEP4:役割に応じた研修の実施
対策を形骸化させないために、教育は不可欠です。

全従業員向け研修: カスハラとは何か、会社の対応方針、相談窓口の存在などを学び、自分ごととして捉える機会とします。
管理職向け研修: 部下から相談を受けた際の適切な対応(二次被害の防止)、事実確認の方法、エスカレーションの判断基準など、マネジメント層としての役割を学びます。
窓口担当者向け研修: より専門的な傾聴スキルや、法的な知識、精神的な負担を抱える相談者への対応方法などを習得します。

STEP5:顧客への協力依頼(意思表示)
従業員を守る姿勢を、顧客にも理解してもらうことが重要です。店頭やレジ横、公式サイトの分かりやすい場所に、「お客様へのお願い」といった形でポスターを掲示しましょう。
(例)「私たちは、お客様に心からご満足いただけるサービスを目指しています。そのためにも、従業員が安心して働ける環境にご協力ください。暴言や威嚇など、他の従業員やお客様の尊厳を傷つける行為があった場合、サービスの提供をお断りすることがございます。」
このような意思表示は、悪質な要求への抑止力となります。

STEP6:外部専門機関との連携体制構築
すべての事案を自社だけで解決するのは困難です。対応に窮する悪質なケースに備え、平時から地域の警察署や顧問弁護士、産業医といった専門家と連携し、いざという時にすぐに相談できる体制を構築しておきましょう。

カスハラ対策で得られる6つのメリット

カスハラ対策の義務化と聞くと、「また仕事が増える」「コストがかかる」とネガティブに捉える向きもあるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。

従業員をカスハラから守ることは、企業の未来を守るための、極めて重要な「投資」です。

  • 従業員のメンタルヘルス向上
    相談窓口を整備することで精神的負荷を軽減し、生産性向上に寄与。
  • 企業イメージの向上
    社会人として誇れる対応により、採用力や顧客からの信頼が高まります。
  • 法的リスクの軽減
    義務化後に非対応で公表等された場合の風評被害回避につながります。
  • 従業員満足度(ES)の向上
    安心して働ける職場は、従業員のエンゲージメントと定着率を高めます。そして、活き活きと働く従業員は、質の高いサービスを生み出し、結果として顧客満足度(CS)の向上に繋がります。
  • 採用競争力の強化
    「従業員を大切にする会社」という評判は、人材獲得競争が激化する現代において、他社にはない強力な魅力となります。
  • レピュテーションリスクの回避
    カスハラが原因で従業員が心身の不調をきたし、訴訟に発展すれば、企業は安全配慮義務違反を問われ、多額の賠償金だけでなく、社会的な信用を失う可能性があります。対策は、こうした経営リスクを未然に防ぐための保険です。

対策を成功に導く企業事例

ある金融機関では、カスハラ被害の相談件数が全体の20%に達したことを受け、2025年から専門研修と電話相談窓口を設置しました。
従業員アンケートの「安心して働ける職場」の項目が+15%増加し、顧客対応品質も向上しました。

ボディカメラ(ウェアラブルカメラ)で証拠を残す

  • 接客サービス
  • 介護現場

接客サービスや介護の現場でカスハラ、セクハラなどにあった場合、まず証拠を残すことが肝心です。 ボディカメラを身につけていることでハラスメントの防止・証拠の記録にも繋がります。
ボディカメラについてはこちらもご覧ください。

通話録音で証拠を残す

録音したデータは管理画面から再生・ダウンロードなどが可能です。 顧客との電話やカスタマーセンターでハラスメントを受けた場合、すべての通話を自動で録音することで、証拠を残すことができます。
また、言った言わないのトラブル、聞き間違いやメモのし忘れを防止従業員の心理的負担を減らすこともできます。
録音する旨のアナウンスを事前に流すことでカスハラ対策にも有効です。
全通話録音についてはこちらもご覧ください。

奨励金・補助金

東京都では、団体や企業等におけるカスタマーハラスメント防止対策を推進する様々な取組を展開しています。 
カスハラ防止対策の進め方や、カスハラの事例等について、 労務管理やメンタルケア、消費者保護等に関する経験が豊富な専門相談員による相談を開始しているほか、奨励金・補助金の募集を行なっています。

① 企業向け奨励金 ※6月中 募集開始予定

 条例施行日(令和7年4月1日)以降、マニュアルを整備し、実践的なカスハラ防止対策を行った企業等に対し、奨励金を支給します。

 ○規模:(3か年で)10,000件  金額:定額40万円
 ○主な支給要件
 (1)カスハラ防止対策マニュアルの作成
 (2)以下①~③いずれかひとつの対象の取組の実施
    ①録音・録画環境の整備 ②AIを活用したシステム等の導入 ③外部人材の活用

団体向け奨励金 ※6月中 募集開始予定

 会員企業及びその従業員向けに防止対策の体制を整備※した場合に、奨励金を支給します。
 ※申請し、都が交付決定した取組が対象です。

 ○規模:30件  金額:最大100万円
 ○主な支給要件
 (1)企業向けカスハラ対策方針の策定・周知(20万円)
 (2)カスハラ防止対策のサポート窓口の設置(40万円)
 (3)カスハラ対策研修の実施 (20万円)
 (4)外部人材等活用によるカスハラ対策の実施(20万円)

団体向け補助金 ※募集中です

 顧客等との接点を効果的に活用し、防止対策と条例の普及に都と連携して取り組む団体を支援します。
 (補助率:1/2 補助上限:5,000万円 規模:10件程度)

※記載内容は変更される可能性があります。以下の詳細については東京都カスタマーハラスメント防止対策HPをご覧ください。
 https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/kasuhara/index.html

まとめ:2026年義務化までに今すぐ行動を

2026年中に施行される改正労働施策総合推進法では、カスハラ対策がすべての事業主に義務化されます。すべての企業にとって、避けては通れない経営課題です。
法律遵守だけでなく、従業員保護と企業価値向上にもつながるこの制度。
この法改正は、単なる規制強化ではありません。これまで声なき声を上げてきた従業員を守り、理不尽な要求に企業が組織として立ち向かうための、法的根拠と社会的な追い風を与えてくれるものです。

カスハラは、対応する従業員個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき問題です。義務化を「やらされ仕事」と捉えるのではなく、自社の職場環境を見直し、従業員一人ひとりが尊重され、安心して能力を発揮できる企業文化を構築する絶好の機会と捉えましょう。
今から 社内整備を始めることが、法改正後の混乱を防ぐ最良の策 です。

カスタマーハラスメント対策については、こちらの記事もぜひご覧ください。


投稿日: 2025年06月10日、タグ: , ,
カテゴリー: #aiカメラ
AI防犯・監視カメラ
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運営:株式会社バルテック
特徴1
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人手不足の工場、工事現場、学校などカメラが見守り
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