2021年11月29日
アプリやICカードによるキャッシュレス決済の活用が進むなか、セキュリティレベルの高い手段として「顔認証決済」が注目を集めています。当記事では、顔認証決済の仕組みやメリット、活用事例と最新のトレンドをご紹介します。
生体認証「顔認証」を応用した決済システムのこと
顔認証システムとは、目や鼻など顔の特徴的な部分や顔領域の位置、比率などを元に本人確認をする技術です。人間が相手を判別する手段をシステムで実現したものであり、その精度はAIを使ったディープラーニングにより向上します。メリット① 手ぶらで支払いができる
顔を認証カメラに向けるだけで決済が完了するため、現金やクレジットカード、スマートフォンを持ち歩く必要がありません。暗証番号の入力やアプリ立ち上げの手間がなく、スムーズに支払いを済ませることが可能です。現金を持ち歩かない利用者も多く、支払い方法により店を選ぶこともあるほどキャッシュレス決済は社会に浸透しています。メリット② 店舗・施設の業務負担を軽減
顔データを認証すると自動で決済が行われるため、お釣りを用意したりクレジットカードやQRコードを読み取ったりする必要はありません。会計時間を大幅に短縮でき、利用者の満足度向上につながります。メリット③ パスワードの管理が不要
クレジットカードやアプリを利用した決済では、英数字を組み合わせたパスワードを用いて本人確認をすることがあります。これにはパスワードを忘れてしまったというトラブルや、入力時の覗き見リスクが伴います。メリット④ 心理的負担が軽く、幅広い年代が利用しやすい設計
目や鼻など顔の特徴・顔領域の位置や比率による顔認証は、普段から人が相手を判別している方法をシステム化したものです。スマートフォンやパソコンのロックに活用され身近であり、利用者の心理的負担が少ないといわれています。デメリット① 認証精度の不安
顔認証システムでは、認証端末との距離や設置場所、光の当たり具合など条件により正確な認証ができない場合があります。2019年のエセックス大学の発表によると、ロンドン警視庁の顔認証システムが犯罪者と認識した42人のうち、正しかったのは8人だったと報告されています。81%の確率で不正確な認証が起きることが分かり、公的機関でのシステム利用が見直されています。デメリット② 個人情報漏えいの危険性
万が一顔認証システムの情報が漏えいした場合、パスワードのように何度も変更できないため高いリスクが生じます。3Dプリンターで顔を作られ認証を解除されたり、防犯カメラの情報から行動履歴を特定されたりといった危険性があり、生涯不安を抱えることになるかもしれません。【小売】未来型無人化店舗「SECURE AI STORE LAB」
株式会社セキュアは、2020年7月13日に未来型無人店舗「SECURE AI STORE LAB(セキュアエーアイストアラボ)」をオープンしました。顔認証による入退場の管理やキャッシュレス決済、手に取った商品をAIが認識し商品の情報や口コミを表示する接客など、新しい接客体験を実現しています。コロナ禍でのスタッフ削減の動きから注目を浴びており、来店者の行動分析や万引き防止の効果も期待されています。【飲食】近畿大学内の食堂やカフェ4か所で導入開始
近畿大学・東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)では、2020年7月よりマスク着用時でも認証可能な決済サービスを導入。新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、学生の往来が増えることから導入されました。国内の大学での活用は初めてでしたが、学生からは「財布やスマートフォンを取り出さずに買い物ができるので便利」といった声があがっています。【観光】南紀白浜IoTおもてなしサービス実証
NECと南紀白浜エアポートが2019年1月より和歌山県南紀白浜エリアで行っている「IoTおもてなしサービス実証」。事前に顔情報とクレジットカード情報を登録することで、南紀白浜のホテルや観光名所・テーマパークに設置されたカメラが個人を特定し旅行の利便性を高めるシステムです。【銀行】「顔パス」で支払いや入出金を可能に
りそなホールディングスやパナソニックなど4社は、2021年8月より「顔認証」技術を使った決済システムの実用化で連携すると発表。銀行の店頭で顔を認証するだけで入出金・振り込みができる仕組みを2022度にも導入すると発表しました。JCBと大日本印刷を加えた4社で共通の基盤構築が進められています。トレンド① 顔認証決済が進む中国、1億人以上が活用中
防犯カメラが広く普及、政府による後押しもある中国は、顔認証決済の技術が最も進んでいる国とされています。トレンド② 実証実験を進める日本企業・東京五輪での導入も
NEC・パナソニックによる実証実験が進むトレンド③ 衛生面に配慮した認証方法として注目度アップ
顔認証システムではカードや鍵の提示、指をかざす等の特別な動作は不要です。衛生面に配慮し認証できることから、ソーシャルディスタンスが重視されるコロナ禍で注目を集めています。マスクを着用したままでも認証できるシステムの開発・導入も進んでおり、コロナ禍で顔認証決済の活用が後押しされています。機能① 約1秒で高速かつ正確な認証
約1秒での高速認識が可能なAI顔認証システム。ディープラーニング技術に基づく顔認識と撮影情報抽出により、正確率は99.7%以上を実現しています。デュアルカメラにより、写真や動画を用いたなりすましも防止します。機能② 体温を測定しリアルタイムで表示、マスク着用も判定
顔認証と同時に検温を実施、体温をリアルタイムで表示します。マスク着用時(非着用時)も認証できる上、体温異常時・マスクを着用していない場合には音声アラートで警告するなどの設定も可能です。QRコード・ICカードなど多様な認証方法に対応
顔認証機能に加え、アプリのQRコードやICカードによる決済にも対応。顔データの登録に抵抗感がある場合など万が一のトラブルにも柔軟に対応することが可能です。