給与明細電子化とは|同意が必要?メリット、デメリットを解説

2023年11月21日

給与明細の電子化とは

ペーパーレス化が進む現代において、給与明細も電子化する企業が増えています。給与明細を電子化するとどのような変化があるのでしょうか。

この記事では、管理者と従業員の視点からのメリットとデメリットや注意点を解説します。


給与明細の電子化とは

給与明細の電子化とは

給与明細は、従業員の社会保険料や労働保険、給与額、残業代などを記録する重要な書類です。

給与明細電子化とは、紙で手渡しで行っていた給与明細を電子データ化し電子メールやPDF、クラウドなどの電子データに変換して交付することです。

電子化はペーパーレス化をはじめさまざまなメリットがあり、在宅勤務やテレワークなど多様化する働き方にも適しているので、既に多くの企業で実施されています。


2006年に行われた税法改正により、2007年1月1日以降、給与の支払明細書や源泉徴収票の電子交付が可能になっています。
2021年現在では、退職所得の源泉徴収票・支払明細書や公的年金の源泉徴収票等も電子交付の対象となっています。


法律で認められている「電子交付」の方法とは、以下の3つを指します。

【電子交付の種類】
・電子メールでデータを交付する
・インターネットを利用して従業員にアクセスを許可するクラウド方式で閲覧する
・フロッピーディスクやCD-ROM等の磁気媒体等に記録して交付する


参考:1. 基本的な事項及び2.事前承諾|国税庁


給与明細を電子化すると、給与明細の印刷や封入、配布や郵送といった作業工程を大幅に短縮できるため業務効率が向上します。
また、書類の作成にかかっていた人的コストや印刷コストの削減も可能です。

タイミングが掴めずまだ切り替えできていないという企業もいるでしょう。ですが、以前よりテレワーク導入が進んでいる今こそ切り替えが生きてくるタイミングです。


給与明細を電子化したら何が変わる?

給与明細を電子化したら何が変わる?

給与明細書を電子化することで、給与明細をクラウド上やweb上で閲覧することができるようになります。その他、具体的にはどのような作業が変わっていくのでしょうか。


ペーパーレスで給与明細を作成できる

まず大きく変わるのが、ペーパーレスで給与明細を作成できるようになる点です。

電子化しデータ等で従業員に送付するので、データから印刷、仕分け、封入、配布または投函といった一連の工程を大幅にカットできます。

業務効率化を図れるだけでなく、「配布する相手を間違えた、他人の給与明細を渡してしまった」といった人的ミスの防止にもつながります。

さらに、給与明細の作成場所・保管場所を気にしないですむのも電子化のメリットです。
紙の給与明細書は、他の従業員の目に触れないよう作業場所に気を配らなければいけませんし、過去分を保管するには保管場所も必要です。

電子化することで、大幅に利便性の向上が図れるでしょう。


メールで給与明細を配信できる

電子化により、給与明細書のメール配信が可能になります。

給与計算システム等を用いて、クラウド上やアプリで給与明細書を閲覧することも可能です。

紙の給与明細書の場合、郵送であれば封筒代・切手代・郵送料が発生しますが、電子化による配信ではこうしたコストを一律にカットでき、給与明細書発行のに伴う経費の削減、業務効率化にもつながります。


勤怠を電子化していた場合、シームレスに連携できる

給与明細書の電子化の魅力は、給与明細書作成に関する事だけではありません。

勤怠管理システムを導入している場合、給与明細書発行と連携できます。
給与データを自動で取り込み、日々入力する勤怠情報と給与計算が連動されるため、業務にかかる時間を大きく削減できるだけでなく、小さなミスの削減につながります。


給与明細電子化のメリット:管理者側

給与明細電子化のメリット

給与明細の電子化には、管理者と従業員それぞれにメリットがあります。まずは管理者側でのメリットを見ていきましょう。


管理者側のメリットは、以下の3つが挙げられます。

・コストの削減
・ミスの減少と業務効率化
・紛失リスクの軽減

それぞれのメリットについて詳しく解説します。


コストの削減

給与明細を電子化すると、メールやWeb上で配布が可能なため、ペーパーレスを行うことでのコスト削減が期待できます。
主に紙や印刷代、郵送代、封筒の代金などが不要になります。毎月積み重さなることなのでコストを大幅に削減できるのです。

加えて、印刷した明細書の封入や切手貼り、投函作業などにかかっていた手間や時間が短縮されることで、その業務に費やしていた人件費も結果として削減できます。
これらにかかっていた費用は、従業員数の多い企業ほど大きな金額になると思われます。


【削減につながるコスト】

・印刷代
・紙代
・封筒の費用
・郵送費(郵送代、封筒代)
・印刷から配布にかかる人件費


ミスの減少と業務効率化

給与明細の交付は毎月発生するものです。人の手で給与情報の管理や給与明細の配布作業を行っていると、気をつけていても配布ミスや給与データの転記ミスなどは発生してしまいます。


電子化によって、発行だけでなく計算も行ってくれます。近年は、社会保険、所得税、住民税を自動計算してくれる機能つきのソフトやサービスが多いため、人為的ミスが起きにくい仕組みになっています。

給与明細の電子化により、従来かかっていた業務フローを短縮できるため、「印刷する」「確認して封入する」「配布する(手渡し・郵送)」という業務をカットでき、業務効率化につながります。


給与明細の電子化で効率化できる主な業務は以下の通りです。

・給与データから紙の給与明細書を作成する業務(印刷・給与データ連携など)
・紙の給与明細書を各従業員に配布する業務
・休職などで給与明細書を受け取れない従業員に向けた郵送業務


従業員の多い会社は、給与管理システムから紙の給与明細書に印刷するだけでも大きな負担です。
また、紙の給与明細書を各従業員に配布する業務も、大人数・多拠点の場合は無視できません。


紛失リスクの軽減

給与明細に限らず紙で発行した書類は、配送準備から配布時までの間に紛失してしまったり、従業員自身が紛失してしまったりする場合があります。

しかし、給与明細が電子データで配布され、端末から確認できるようになれば、紛失のリスクはなくなります。

また、企業に給与明細の保管義務はないものの、賃金台帳と同じく最低5年間保管しておくことが推奨されています。 さらに、明細書を保管するための物理的なスペースが不要になるのもメリットのひとつといえます。

電子化された場合は、「給与明細を受け取っていない」という事態になっても、どの従業員の給与明細を作成し忘れているのか、誤って他人のメールアドレスに送ってしまったのかがオンライン上で瞬時に判別できます。

万が一他人のメールアドレスに送ってしまっていても個人個人でセキュリティパスワードを設定しているので、その給与明細を閲覧することはできないのです。


データ管理で過去検索

確定申告を個人で行う従業員がいた場合、人事部や経理に給与額や諸費用開示の問い合わせが来ます。社会保険や年末調整の確認をする際は、過去のデータを参照します。

データで管理しておけば、社員の情報に紐づいた給与情報の検索が容易にできるのです。


給与明細電子化のメリット:従業員側

給与明細電子化のメリット

従業員にとってのメリットは、いつでもどこでも給与明細を確認できることです。

スマホやタブレットなどモバイル端末に対応した製品も数多くあり、外出先や普段の業務でパソコンを使っていない場合でも、給与明細データをいつでも確認できます。

また、最近の多くは給与明細だけでなく、賞与明細や源泉徴収票などの各種明細もWeb上でいつでも確認が可能です。

電子化された給与明細をいつでもどこでも確認できるようになり、かつ「紛失」という事態を避ける事ができるのです。


給与明細の紛失を防げる

給与明細は個人がいくら稼ぎ、どれだけ納税したかを確認できる重要な書類です。給与明細の電子化では、紙と比較して紛失リスクが少なくなります。


給与明細には、所得税額や社会保険料などさまざまな情報が記載されています。副業をしている従業員は確定申告の際にこれらの情報が必要になります。

紙でも電子ファイルでも、紛失に際して企業側が再発行することは可能です。

しかし、勤怠情報など給与明細の作成に必要な労働の記録を保存しなければいけない期間には、一定の保存期間が設けられています。
保存期間は企業によって異なりますが、破棄した過去の分の記録は再発行が難しいため、紛失するという事態は避けたいところ。電子化で給与明細書を受け取れることは、物理的な紛失リスクは回避でき、従業員にとってメリットになります。

給与明細書には氏名や従業員番号など個人情報も含まれるので、セキュリティ面でも紛失には注意しなければなりません。


いつでも給与明細を確認できる

いつでもどこでも、場所と時間を問わずに給与明細を確認できるようになるのも電子化のメリットです。


昨今では、テレワークのようにオフィス以外の場所で働くスタイルが増えてきています。そうした従業員にとっては、電子化は非常に便利なものです。
住宅ローン申請のための書類を作成や、副業をしている従業員が確定申告をする際にも、給与明細を確認できる端末があればいつでも確認できます。


給与明細の電子化によるデメリット

給与明細の電子化によるデメリット

給与明細の電子化は、気をつけなければいけない課題もあります。
具体的には、情報漏えいのリスクと、既存方法からの移行に伴う業務負担というデメリットです。


情報漏洩のリスクがある

電子データにはどうしてもつきまとうリスクとして、情報漏洩がある点も要注意です。

メールで給与明細データを送信する場合は、誤送信やハッキングなどのリスクが予想されます。
社内、あるいはWebから給与明細データをダウンロードした後にも、ファイル流出のリスクはあり、管理にも注意しなければなりません。

給与明細のデータを保存したUSB等の紛失も、考えられる情報漏洩のリスクです。

利用していたクラウドサービスの障害により、保存していたデータが消えてしまったり、流出してしまったりする事例もあります。

電子化を行い安全に運営していくには、担当者が基本的な情報セキュリティ対策に労務担理解を深める事、利用するシステムやクラウドサービスが十分な情報セキュリティ対策を施しているかの確認は必須です。


総務省が公表している情報セキュリティ対策のガイドライン等を参考にしつつ、万全な体制を構築しましょう。


事例13:クラウドサービスに預けていた重要データが消えた|事故・被害の事例|企業・組織の対策|国民のための情報セキュリティサイト (soumu.go.jp)


ウイルス対策ソフトによるウイルスチェックや社内システムのセキュリティ対策は非常に重要です。給与明細データの暗号化やパスワード付与など、できる限りの対策を行いましょう。


電子化のために、既存のやり方を変える必要がある

電子化で既存のやり方から新たな業務フローに移行するにあたり、想定される課題にも対応しなければいけません。
電子化に対応した業務フローの整備、マニュアルの新たな作成が必要です。

例えば、作成したファイルの作成場所や保存場所、クラウドサービスを利用する場合はアクセスする端末の選定などです。
電子メールを利用する方法と、クラウドサービスやシステムを利用する方法では、それぞれ以下の課題が考えられます。


・電子メールで交付する場合

電子化した給与明細を送信する先のメールアドレスを全員分確認する必要があります。
給与支払い日が異なる場合は、グループ別にメールリストを作成するなどして、状況に対応した、効率の良い配信をする準備が必要です。


・クラウドサービスやシステムを利用する場合

利用するシステムやサービスのフォーマットに合わせたデータを作成する必要があります。
現在利用している給与計算システムと連携させる場合は、お互いのシステムの互換性を確認します。互換性がない場合は、手作業でデータを加工するといった負担が発生します。


給与明細電子化の注意点

給与明細電子化の注意点

給与明細の電子化には、導入前に知っておくべき注意点もあります。しっかり理解したうえで検討を進めましょう。


従業員からの同意の取得が必要

給与明細の電子化は、平成18年4月1日施行の税制改正によって認められています。

しかし電子交付の条件として、従業員からの同意取得が必要です。
同意は証拠として残るものでなくてはいけないため、同意書を作成する必要があります。従業員からの承諾を得るよう、忘れず準備を整えなくてはなりません。


電子化によって業務フローが大きく変わります。

人事労務担当者がメリットを説明して電子化の推進をしたとしても、社員が同意をしてくれない事には進めることができません。

同意と理解なくして電子化は不可能です。

時間をかけてメリットを説明し、導入前の反対や導入後の問題が発生しないよう準備しましょう。

人事部や総務部など給与明細作成に関与する部署が協力する必要があります。


既存の給与計算システムとの相性

給与明細電子化システムを利用するためには、既存の給与計算システムから給与データを取り込む必要があります。

既存の給与計算システムとの相性が重要です。


システム導入に思っていたより費用がかかった、システムの運用方法は自社の運営に合っていないなどの問題が発生する可能性があります。

互換性がないなど、相性が悪いと読み込み時のデータ整形に手間がかかりミスにもつながります。
事前に相性を確認しておくと安心でしょう。無料トライアルサービスなどを利用すると事前にわかりやすいです。

給与明細システムを導入するとシステムの導入コストや月額料金、保守運用コストなどが必要となります。
紙の給与明細書にかかっていたコストと比べてみて、コスト的にもメリットのある選択をする必要があります。


まとめ

給与明細電子化についてご紹介しました。 働き方改革の推進によって、さまざまな側面でIT化が進んでいます。

給与明細電子化については、コスト削減はもちろんのこと、業務を効率化でき従業員にとっても良い変化になるもの。 全社員にメリットが感じられるようにしっかり準備して、慎重にすすめましょう。


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