2023年3月17日
飲食店の経営の上で、他店との差別化を図るためには、コンセプト作りが非常に重要です。
コンセプトを決めておけば、店舗の強みを生かしたメニュー開発や店づくりが可能になり、従業員のオペレーションも統率がしやすくなります。
本記事では、飲食店でのコンセプト設定の5ステップに加えて、コンセプトシートの形式や有名飲食店のコンセプト設計の実例などについて解説いたします。
コンセプトとは、方向性やテーマのことを指します。例えば、こんな感じの店舗と表したものです。
飲食店開業では、コンセプト以外でも店名や内装などのあらゆる要素を決定していく必要があります。
例えば、「落ち着いた場所でお酒を飲める居酒屋空間」というコンセプトを決定したら、内装は黒を基調としたものに統一したり、照明は若干暗めながらも温かみを演出する配置にしたりするなどの提案をしていくのが良いでしょう。
また、先に店舗名や内装が決まっている場合、後でコンセプトを再設定していくとよいでしょう。
店舗の強みを活かすようなコンセプトが設定できれば、「この店はこんなサービスがあるんだ」「このお店の雰囲気が好き」などお客さんの店舗側へのイメージ定着が着実にできます。
開業する飲食店の目的が何かを明確にしておくと、後々ミスマッチは少なくなります。
地元の人たちにコミュニティを提供したり、特定の料理にこだわる専門店を開いたりなど、目的に応じたコンセプト検討が重要です。
どのような客層をターゲットにするかを決定します。
年齢層や性別、職業等を考慮したうえで、ターゲット層にあったコンセプト検討が重要です。
競合店の調査は差別化を図るために重要です。
例えば、競合店がない料理の提供をしたり、店内の雰囲気やサービスについて工夫したりなど、他競合店と異なる部分を発見することが重要です。
独自性の演出は非常に大切です。
地元農家から仕入れた野菜のみを厳選したり、オリジナルメニューを考案したうえで、店内の雰囲気を特徴的にしたりと、自分たちの個性を打ち出すことが大切です。
ロゴに店名や内装、メニュー等々ブランドイメージを考える必要があります。
一貫性あるデザインや雰囲気の醸成により、顧客への印象を強化することができます。
飲食店のコンセプトを考える上でアイデアを出していくためには、コンセプトシートを使って考えていくのが最も良いでしょう。
他社との差別化のためにも、お客さんが親近感を感じる自店独自のコンセプトの形成が必要です。
コンセプトの出し方としては基本的に情報の整理・伝達において有用であるフレームワーク「5W2H」の疑問詞がよいでしょう。
5W= When(いつ)Where(どこで)Who(だれが)What(なにを) Why(なぜ)
2H= How(どのように) How Much(いくらで)
まず、「When(いつ)」は営業時間です。基本的に営業時間のことを指します。
業態の同じ店舗を比較して、いつの時間単に来店数が多いかなどを調査するといいでしょう。
また飲食店舗を構えたい地点の近くの人の流れを確認すると、どんな人が自店のお客さんになるかをイメージできるでしょう。
飲食店を出店するエリアや物件は、経営における重要なポイントです。
駅からの距離はどれくらいか、商店街の中かオフィス街かなどの場所の条件によって、お客さんは変わってくるので、出店をするエリアの把握はコンセプトを捉える上で必須と言えます。
年齢層や性別、職業など、具体的なお客さんの人物像を先述した「Where」の情報から決めておくと、コンセプトをイメージしやすいでしょう。
先ほどの「Who」で出てきた人物像に沿って考えていくと、「何の」料理を食べたいかが分かってきます。例えば、20代の若い男性サラリーマンなら大盛でボリューミーな料理を希望するでしょうし、対して女性OLなどであれば小食ゆえに、小鉢に入った料理を好きなものだけ選ぶスタイルが受けるかもしれません。
なぜ、店舗を創業することにしたのか、なぜ店舗名がこの名前なのかなど創業理由や経営目的を分析します。
ここが明確であればあるほど、コンセプトも絞りやすくなります。
どのようにして飲食店を宣伝していくかを考えます。
広告やチラシ、看板などオフラインな方法もあれば、SEOを意識したブログを書いてみたり、最近ではSNSを使って広告をする方法もあります。
飲食店の料理やサービスの料金を設定します。
ここまで見てきた情報を踏まえて、予想される客層に向けた料金設定にするなどして決めていきましょう。
これらの5W2Hの中に含まれる以下の三項目は、飲食店のコンセプト設定において特に重要な部分になります。
飲食店の名前は、お店の看板を見た際あるいは検索の際に必ず目に入ってくるものです。
したがって、コンセプトに基づいて制定されていることが理想です。
店名の指す言葉の意味に加えて、ひらがななのか漢字なのかで与える印象は異なります。
ひらがな:やわらかい・あたたかい雰囲気
(例) やよい軒 ・ すき家 ・ ほっともっと
漢字:格調の高い雰囲気
(例) 一蘭 ・ 牛角 ・上島珈琲店
ローマ字・英語:お洒落・洗練されている雰囲気
(例) IPPUDO・EXCELSIOR CAFFE
コンセプトを店名に反映させた例としては「いきなりステーキ」が特徴的でしょう。
いきなりステーキでは、前菜なしでメインディッシュのステーキを「いきなり」提供することで、お客さんに「満腹感」を提供することがコンセプトとなっています。
「ステーキがいきなり出てくる店」というイメージが、店名を見聞きするだけで刷り込まれ、ステーキだけを食べたいお客さんが再び来店したくなるのです。
また、「いきなり+ステーキ」「びっくり+ドンキー」のような、普通ならありえない言葉の組み合わせはお客さんにとって印象を強く与えます。
お客さんが常連になるかどうかにおいて、「接客スタイル」というのはきわめて重要です。話しかけられるのがうれしいお客さんもいれば、ゆったり一人がいいと考えるお客さんもいます。
お客さんは「静か OR にぎやか」などお店ごとのコンセプトに沿った形で来店を決めるため、飲食店の外観や店名につられてゆったり過ごすつもりが、店内はワイワイとしていたら、違和感を覚えてしまいます。
料理の見た目・味というのは、「どんな年齢層の人が食べるか」「どういった状況下で食べるか」を考えた上で決定するのがいいでしょう。
例えば、若年層がターゲットなら思わず写真をとりたくなるような「映える」見た目に、お酒のつまみとしてのメニューなら濃い目の味設定にするという風な決め方をします。
コンセプト決定の際の5W2Hでターゲットが定義されさえすれば、迷わず決めることが可能です。改良すればするほど料理というのは、最初期のコンセプトから離れてしまいます。
定期的なアンケート集計をすることで、満足度を確認すれば初めのコンセプトを忘れず料理を提供できるでしょう。
ちなみに、飲食店の開業までの時間の流れから考えて行くワークフレームも存在します。
①立地や物件の条件
②ターゲット客層
③利用動機・ポジショニング
④オペレーション・サービス
⑤料理メニュー
⑥店内外の環境
⑦支払方法・価格設定
⑧宣伝・プロモーション
5W1Wだけにこだわらず、飲食店のオーナーさんごとにあったコンセプトシートを作って行くといいでしょう。
コンセプト決定を慎重に進めるうえでは、先ほど説明したコンセプトシートに身近な飲食店の事例を当てはめてみることも有効な方法です。
ここでは、身近な飲食店のコンセプトシート作成に役立つ飲食店実例を3つほど挙げて解説します。
全国1230店舗・海外200店舗を構える「カレーハウスCoCo壱番屋」は元々、創業者の宗次德二氏と直美氏が共同で営む喫茶店「バッカス」の出前のカレーが評判となったことで独立しスタート。
「毎日食べたくなる、家庭料理のような親しみやすい一皿」をコンセプトとして、
・家でお母さんが作ってくれるカレーのように、ご飯の量・カレーの辛さをお客さん自身で決められるシステム
・徹底した掃除の実施で暖かい家庭のような店内空間
を維持し続けました。
コンサルの声を受け入れずに「お客様の声だけ」を聞き、初心を貫き続けたことでコンセプトを常に維持し、ここまでの事業拡大に成功しました。
その結果、多くの飲食店事業者から飲食店経営の成功例として記憶されています。
(参考 株式会社壱番屋ホームページ 、宗次德二「日本一の変人経営者」より)
ドトールコーヒーの創業者鳥羽博道氏は二年半に渡るブラジルでのコーヒー修行の中で出会った、「バール」と呼ばれる簡単な軽食・スイーツやコーヒーを扱う飲食店形態と、ヨーロッパの視察ツアーをした際に出会った、仕事の活力を得るべく出勤途中の人々が並んでいる立ち飲みスタイルのコーヒー店に衝撃を受けました。
その経験から、「バール」と欧州の立ち飲みスタイルの両方を融合した店舗を通じて
「一杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様に『安らぎと活力』を提供すること」
をコンセプトとして、1980年に原宿でドトールコーヒー1号店をスタートしました。
・低価格ながらも、チープな紙コップでなく当時画期的だった「陶磁器」のカップでフルサービス感を与える。
・店内の絵画・花や、季節ごとに微妙な明るさ調整が可能な照明など「安らぎ」を与える内装にする。
・清掃を徹底する。
・お客さんの負担にならないコーヒー1杯の価格設定として「150円」のコーヒーを提供する。
・出勤前でも食べやすいホットドックなどお客さんを考えた軽食メニュー
など、お客さんの目線に立ちつつ、コンセプトにある「安らぎと活力」を与えられる店づくりを徹底したことで、現在までの事業拡大に成功しました。
(参考:株式会社ドトールコーヒー公式サイトより)
くら寿司は「安心・美味しい・安い」をコンセプトとして、1995年に会社を設立。
「食の戦前回帰」も同時に訴え、素材そのものの味わいを保ちつつ「食」が安心・安全な戦前のバランスある健康的な食を取り戻すことを訴えています。
・店名の「無添」とはくら寿司独自の造語であり、指定している四大添加物の「化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料」が無添加であることを指している。
・QRコード時間管理システムという独自の技術の特許を取得し、一定時間経過した寿司を自動廃棄し衛生面への配慮を行いつつ、一定の美味しさを保つ。
・他の競合よりも早くタッチパネルを導入し、省人化を実践。
・そのほかにも水回収システム等自動化のシステムを多数導入し、人件費の削減に注力。
・5皿食べるごとに一回回せる「ビッくらポン」の導入で、なるべく多くの寿司を食べるように誘導することで、一定以上の売り上げを実現。
(参考:くら寿司株式会社 より)
飲食店の開業は、自身のキャリアや資金をかけて行う
人生のなかでも有数の決断であり、チャレンジとなることでしょう。
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