つながらない権利とは?法改正見送りでも企業対応が急務な理由と対策【2026年最新】

2026年4月7日

つながらない権利とは?法改正見送りでも企業対応が急務な理由と対策を徹底解説【2026年最新】

この記事の監修者

社会保険労務士 飯田 保夫

社会保険労務士飯田事務所 代表。2010年社会保険労務士登録。FP技能士1級。建設・製造・IT・人材派遣・介護など幅広い業種の労務コンサルティングに従事。労働問題対応・就業規則策定を専門とし、企業の働き方改革を支援している。

「つながらない権利」とは、労働者が勤務時間外や休日に、業務上のメール・電話・チャットなどの連絡への対応を拒否できる権利のことです。

2017年にフランスで法制化されたのを皮切りに世界各国で法整備が進み、日本でも約40年ぶりとなる労働基準法の大幅改正の議論の中で、つながらない権利に関するガイドライン策定が検討されてきました。しかし、2025年12月に2026年通常国会への法案提出が見送りとなったことが報じられています(出典:日本経済新聞 2025年12月26日)。

ただし、改正の方向性が白紙になったわけではありません。労働政策審議会・労働条件分科会での審議は継続中であり、2027年通常国会での法案提出・2027年以降の段階的施行が現時点の見通しです。つまり、法改正の「先送り」は「準備の猶予期間」であり、今から動く企業と後から慌てる企業の差は既に始まっています。

連合の調査では、勤務時間外に業務連絡がくると回答した雇用者は72.4%にのぼり、そのうち62.2%がストレスを感じているという結果が出ています(出典:連合「つながらない権利に関する調査2023」)。

本記事では、以下のような疑問を持つ企業の経営者・人事担当者の方に向けて、わかりやすく解説します。

・つながらない権利とは?企業にとってのメリット・デメリットは?
・法案見送りでも企業は今から何を準備すべきなのか?
・ルールを作っても守れない「個人スマホ・LINE問題」はどう解決するのか?

特に対策が難しい「電話対応の制御」「個人スマホ(BYOD)での業務連絡」については、勤怠管理システムと連動して着信を自動ブロックし、仕事用とプライベート用の通信を1台のスマホ内で完全分離する具体的なソリューションまでご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

つながらない権利の対策についてのお問い合わせ

目次

1.「つながらない権利」とは?基本をわかりやすく解説

つながらない権利(Right to Disconnect)とは、労働者が勤務時間外や休日に、業務上のメール・電話・チャットなどの連絡への対応を拒否できる権利のことです。

ポイントは、企業に対して勤務時間外の連絡そのものを「全面禁止」するものではなく、あくまで受け手側である従業員が対応を拒否しても、人事評価やキャリア形成で不利益を受けないことを保障する考え方であるという点です。

つながらない権利の3つの核心

対象となる連絡:メール、電話、チャット、SNSなど業務に関わるすべてのデジタルコミュニケーション
対象となる時間:退勤後、早朝深夜、休日、有給休暇中、長期休暇中
保障される内容:連絡への不応答を理由とした不利益取扱いの禁止

この概念が世界で初めて法制度として認められたのは2000年代のフランスです。フランスの最高裁判所(破毀院)は2004年に、勤務時間外にかかってきた携帯電話に応答しないことは労働者の義務違反ではないとの判断を示しました。その後、2017年に正式に法制化され、世界的な議論の起点となりました。

なお、日本でも最高裁は仮眠時間の労働時間性が争われた「大星ビル管理事件」(最判平14.2.28)において、休憩時間とは単に業務から離れるだけでなく労働からの解放が保障されることを意味するとの判断を示しています。「つながらない権利」の考え方は、こうした判例の延長線上にあるとも言えます。

2. なぜ今注目?背景にある3つの社会変化

① スマートフォンの普及による「常時接続」状態

スマートフォンやクラウドツールの普及により、場所や時間を問わず業務の連絡が可能になりました。便利さの一方で、「いつでも連絡が取れる状態」が常態化し、労働者にとっては仕事とプライベートの境界が曖昧になる大きな原因となっています。

② テレワーク・リモートワークの定着

コロナ禍をきっかけにテレワークが急速に普及しました。自宅が職場になることで、始業・終業の線引きが物理的にも心理的にも難しくなり、「隠れ残業」が発生しやすい構造が生まれています。常時カメラONを求めるなどのリモートハラスメント(リモハラ)も社会問題化しています。

③ 若年層の価値観の変化と人材確保競争

チャットやメールに慣れたZ世代を中心に、突然の電話や即時対応を求められる環境を強いストレスに感じる傾向が強まっています。「つながらない権利」を保障できない企業は、若手人材の採用・定着で不利になるリスクが高まっています。

3. 企業にとってのメリット・デメリットを徹底比較

つながらない権利への対応は、単なる「法令遵守」の問題にとどまりません。企業にとって具体的なメリットとデメリットの両面があります。経営判断として正しく把握しておくことが重要です。

企業にとっての3つのメリット

メリット①:離職防止・従業員エンゲージメントの向上
連合の調査では、勤務時間外の連絡を制限してほしいと考える雇用者は66.7%にのぼります。つながらない権利を保障することで、従業員の「この会社で長く働きたい」という意思が高まり、離職率の改善に直結します。

メリット②:採用力・企業ブランドの強化
「休みの日は仕事の連絡が来ない」「退勤後は自分の時間を大切にできる」――こうした環境を明示できる企業は、特にZ世代を中心とした若年層の採用市場で大きなアドバンテージを持ちます。

メリット③:集中力・生産性の向上
勤務時間外の連絡が減ることで、オンとオフの切り替えが明確になり、翌日の業務パフォーマンスが向上します。「ダラダラ残業」の抑制効果もあり、組織全体の生産性改善が期待できます。

対応に伴う3つの課題(デメリット)

課題①:緊急時の対応遅延リスク
勤務時間外の連絡を一律に遮断すると、災害・事故・システム障害などの緊急時に初動が遅れる可能性があります。「何が緊急で、何は翌営業日でよいか」の線引きと、緊急連絡体制の整備がセットで必要です。

課題②:業務の属人化が浮き彫りになる
「あの人にしかわからない」「担当者に連絡しないと進まない」――つながらない権利の導入は、こうした属人化された業務フローの問題を浮き彫りにします。逆に言えば、業務標準化やナレッジ共有を進める絶好のきっかけにもなります。

課題③:顧客対応との両立
BtoCビジネスやサポート業務では、顧客からの連絡が勤務時間外に集中することもあります。社内連絡のルール化だけでなく、顧客対応の窓口設計(当番制・IVR・自動応答など)も合わせて検討する必要があります。

ポイント

デメリットとされる課題は、いずれも「つながらない権利があるから発生する問題」ではなく「もともと存在していた組織の課題」が顕在化したものです。制度導入をきっかけに、緊急連絡体制の整備、業務の標準化、顧客対応フローの見直しに取り組むことで、組織全体の強度を高めることができます。

4.【データで見る】日本の勤務時間外連絡の実態

日本では「つながらない権利」はまだ法制化されていませんが、勤務時間外の業務連絡は既に深刻な問題となっています。各種調査データを見てみましょう。

72.4%

勤務時間外に業務連絡が
くることがあると回答

連合「つながらない権利に関する調査」2023年

62.2%

時間外連絡にストレスを
感じると回答

連合 同調査

36.8%

「ルール未整備、
現場に任せている」企業

厚生労働省「労働時間制度等に関する
アンケート調査」令和5年

厚生労働省が令和5年に3,441社を対象に実施した「労働時間制度等に関するアンケート調査」では、勤務時間外の連絡について「特段ルール等は整備しておらず、現場に任せている」企業が36.8%で最多でした。一方、「災害時等の緊急連絡を除いて連絡しない」は29.4%、「翌営業日に対応が必要など急を要する業務のみ」は27.1%と、一定の対応を進めている企業も存在します。

また、厚生労働省の「令和6年就労条件総合調査」でも同様の傾向が確認されています。つまり、問題は広く認識されているにもかかわらず、対策が追いついていない企業が多いのが現状です。

5. 世界の法制化動向:フランスからオーストラリアまで

つながらない権利の法制化は、欧州を起点に世界各国で進んでいます。主な国の動向を時系列で整理します。

国名 施行年 概要
フランス 2017年 従業員50人以上の企業に、つながらない権利に関する労使協議の義務化(労働法典 Article L. 2242-17-7°)
イタリア 2017年 リモートワーク法の中でつながらない権利に言及、雇用契約への明記を義務化
スペイン 2018年 データ保護法にてデジタル・ディスコネクト権を明記
ポルトガル 2021年 企業が就業時間外に従業員へ連絡することを原則禁止、違反企業には売上高に応じた罰金
ベルギー 2022年 公務員を対象にした勤務時間外連絡制限を施行
オーストラリア 2024年 勤務時間外の連絡に応答しない権利を法定化、違反雇用主に罰金
アメリカ
(カリフォルニア州)
検討中 企業ポリシーの策定を義務化する州法案を検討
イギリス 検討中 労働党がつながらない権利の法制化を目指す方針を表明

共通しているのは、単に「連絡禁止」とするのではなく、労使の話し合いによるルール策定を促すアプローチが主流であるという点です。一律の禁止ではなく、業種や職種に応じた柔軟な対応が求められています。

出典:各国法令およびJILPT 労働政策フォーラム「ICTの発展と労働時間政策の課題」(2024年9月)

6. 法案提出見送りの真相と「つながらない権利」ガイドラインの行方

日本でも大きな動きが続いています。約40年ぶりとなる労働基準法の大幅改正に向けた議論が進行していましたが、2025年12月に2026年通常国会への法案提出が見送りとなりました。まず経緯を正確に整理します。

法案提出見送りの経緯と現在地(2026年3月時点)

・ 2025年1月:厚生労働省「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表。つながらない権利についてガイドライン策定等の積極的な方策を検討すべきと提言
・ 2025年3月〜10月:労働政策審議会・労働条件分科会で具体的な審議が進行
・ 2025年11月:高市政権が「労働時間規制の緩和検討」を指示。厚労省の規制強化方向との調整が難航
2025年12月26日:上野厚生労働大臣が閣議後記者会見で、2026年通常国会への法案提出見送りを明言(出典:日本経済新聞
・ 2026年2月:衆議院の解散総選挙。政権動向により施行時期がさらに左右される可能性
現時点の見通し:2027年通常国会での法案提出・2027年以降の段階的施行が有力

見送りでも「つながらない権利」の議論は止まっていない

重要なのは、法案提出の見送りは改正内容の白紙撤回を意味しないということです。労働政策審議会・労働条件分科会での審議は継続しており、つながらない権利に関するガイドライン策定は引き続き検討項目に含まれています。

2025年1月に公表された「労働基準関係法制研究会」報告書では、つながらない権利について「労使で社内ルールを検討していくことが必要」とし、ガイドライン策定等の積極的な方策を検討すべきと提言しています。

その後の労働政策審議会・労働条件分科会では、より踏み込んだ議論が行われています。特に注目すべきは、2025年3月の第196回分科会での労働者側委員の発言です。

労働条件分科会での注目発言(2025年3月)

・「社内のルールを決めるだけでは十分な環境整備は難しく、法制化も念頭に置いた検討も必要」(労働者側委員)
・「事業所ごとの労使協定などの明文化も含めて、つながらない権利の確保に資するルール化を促す取組を進めてほしい」(労働者側委員)
・一方で使用者側委員からは慎重な意見も出ており、労使間で議論が続いている段階

出典:第204回労働政策審議会労働条件分科会 議事録労働時間法制の具体的課題について(厚生労働省資料)

「見送り=対策不要」ではない3つの理由

議論は継続中:法案提出の時期がずれただけで、改正の方向性は変わっていません。法案成立から施行まで通常1〜2年の準備期間が必要なため、今から動いている企業と後から慌てる企業の差は既に始まっています

既存のガイドラインで既に言及済み:厚生労働省は「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年改定)で、「時間外のメール等に対応しなかったことを理由とする不利益な人事評価は不適切」との見解を示しています。

先行企業はすでに差をつけている:ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人が深夜・休日のメール自粛ルールを導入、レッドフォックス社が退勤後の連絡遮断機能を持つアプリ「cyzen」をリリースするなど、法改正を待たずに独自の対策を進める企業が増えています。

7. 管理職も対象?緊急時の例外はどうする?

つながらない権利を導入する際に、企業が最も頭を悩ませるのが「管理職の扱い」「緊急時の例外対応」です。この2つを曖昧にしたまま制度を作ると、現場で形骸化する原因となります。

管理職もつながらない権利の対象になるのか?

結論から言えば、管理職も対象とすべきです。海外の法制化事例(フランス・オーストラリアなど)では、管理職を例外としない全従業員対象が主流です。日本の労働条件分科会でも、管理職を含めた議論が行われています。

そもそも「管理職だから24時間対応すべき」という考え方こそが、つながらない権利が必要とされる背景の一つです。管理職の長時間労働やメンタルヘルス不調が深刻化している現状を踏まえ、管理職にこそ休息を保障する仕組みが求められています。

ただし、経営層や緊急対応の責任者には一定の例外を設ける必要があるケースもあります。重要なのは「管理職だから例外」と一括りにするのではなく、役職ごとに対応範囲を明確にすることです。

緊急時の連絡はどう設計すべきか?

つながらない権利は「すべての連絡を禁止する」制度ではありません。真に緊急な場合への対応は、以下の3つのステップで設計します。

ステップ1:「緊急」の定義を明文化する
「人命に関わる事態」「事業継続が不可能になる障害」「法令違反の恐れがある事案」など、具体的な基準を就業規則に記載します。「顧客からの問い合わせ」や「翌日の会議準備」は緊急に該当しません。

ステップ2:緊急連絡の手段を限定する
通常の業務連絡(メール・チャット)とは別に、緊急時のみ使用する連絡手段を設定します。例えば「緊急連絡は電話のみ」「専用の連絡チャネルを設ける」といった形で、通常の通知と緊急の通知を明確に分離します。

ステップ3:当番制・エスカレーションフローを整備する
特定の個人に負荷が集中しないよう、緊急対応の当番制を導入します。「今週の緊急連絡先は◯◯さん」とローテーションを組み、全員が平等に休める体制を構築することが肝心です。

8. 企業が直面する4大リスク

つながらない権利への対応を怠ると、企業は以下の深刻なリスクに直面する可能性があります。

リスク①:未払い残業代の請求

勤務時間外のメール・電話対応は、その頻度や強制力次第で「会社の指揮命令下にあった」と判断され、労働時間としてカウントされる可能性があります。法改正の議論が進むほど、「返信は任意だった」という企業側の主張は通りにくくなるでしょう。

リスク②:パワーハラスメント認定

深夜や早朝、休日への頻繁な業務連絡は、たとえ送り手に悪意がなくても受け手にはハラスメントと感じられるケースがあります。パワハラ防止法の観点からも、時間外連絡のルール整備は急務です。

リスク③:メンタルヘルス不調・労災リスク

常に業務連絡に縛られる環境は、従業員の心身の回復を妨げます。燃え尽き症候群やメンタルヘルス不調が発生した場合、労災として認定される可能性もあります。

リスク④:人材流出・採用力の低下

特に若年層は「ワークライフバランス」を重視する傾向が強まっています。時間外連絡が常態化している企業は、優秀な人材から敬遠される原因になりかねません。

9. 今すぐできる!企業の具体的な対策5ステップ

つながらない権利への対応は、一度に完璧を目指す必要はありません。以下の5つのステップで段階的に取り組みましょう。

ステップ1:現状の実態把握
まず自社で勤務時間外の連絡がどの程度発生しているか、どの部署・役職で多いか、従業員がどう感じているかをアンケートやヒアリングで把握しましょう。

ステップ2:社内ガイドラインの策定
「原則として◯時以降の業務連絡は禁止」「緊急時の定義と連絡手段を明確化」「翌営業日対応を基本ルールとする」など、自社の業種・職種に合った具体的なルールを策定します。

ステップ3:管理職への教育・研修
ルールの形骸化を防ぐには、管理職の意識改革が不可欠です。「つながらない権利」の意義やリスクについて研修を実施し、率先してルールを守る文化を作ります。

ステップ4:ITツールによるシステム的な制御
メールの予約送信機能、チャット通知のOFF時間設定、そして勤怠管理と連動した電話の着信自動制御など、人の意識だけに頼らないシステム的な仕組みを導入します。

ステップ5:緊急連絡体制の整備
すべての連絡を一律に禁止するのは現実的ではありません。「本当に緊急な場合」の定義と連絡手段(当番制・エスカレーションフロー)を明確にしておくことで、業務への支障を最小限に抑えます。

よくある失敗パターン

「ルールは作ったが管理職が守らない」「メールは止めたが電話は対象外になっている」「制度があるのに現場に浸透していない」――形だけの対応は、かえって従業員の不信感を高めます。そして、実はこれらすべての失敗に共通する最大の原因が、次のセクションで解説する「個人スマホ・LINE問題」です。

10. ルールだけでは解決不可能?個人スマホ・LINE問題という最大の壁

ここまで紹介してきた対策ステップを実行しても、多くの企業で「つながらない権利」が形骸化する根本的な原因があります。それが、個人スマホ(BYOD)での業務連絡という問題です。

なぜ個人スマホが「つながらない権利」の最大の敵なのか?

多くの企業では、従業員が個人のスマートフォンで業務用のメール・チャット・電話を受け取っているのが実態です。さらに深刻なのが、会社が把握していないまま個人のLINEやSMSで業務連絡がやり取りされているケース――いわゆる「シャドーIT」の問題です。

この状態では、どれほど立派な社内ルールを作っても、退勤後にプライベートのスマホを開くだけで、仕事の通知が目に飛び込んでくる環境が続きます。「つながらない権利」どころか、物理的に「つながってしまう」状態を解消できないのです。

個人スマホ業務利用(BYOD)がもたらす3つのリスク

心理的な遮断が不可能:個人のスマホに業務アプリが入っていれば、「通知を見ない」という意思だけでは限界があります。通知バッジや未読表示が目に入るだけでストレスになるという調査結果も出ています。

情報セキュリティ上のリスク:個人LINEでの業務連絡は、端末の紛失・退職時のデータ持ち出し・スクリーンショット流出など、企業のガバナンスが及ばない領域での情報漏洩リスクを抱えます。

労務管理の死角:個人LINEでの「ちょっと確認」「明日の件」といった連絡は、企業側が把握できないため、実態としての時間外労働を計測・管理することが不可能です。

つまり、「つながらない権利」を本当に実現するためには、業務の連絡手段そのものを個人のプライベート空間から切り離す仕組みが不可欠なのです。ルール(制度)だけでなく、システム(仕組み)による物理的な分離が必要です。

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。次のセクションで、この問題を根本から解決するソリューションをご紹介します。

11. 勤怠管理×クラウドPBXで「真のつながらない権利」を実現する方法

前セクションで指摘した「個人スマホ・LINE問題」を根本から解決するのが、クラウドPBX「MOT/TEL(モッテル)」です。MOT/TELは単なる電話システムではなく、「1台のスマホの中で仕事とプライベートを完全に分離する」という、つながらない権利の実現に不可欠な仕組みを提供します。

解決策①:1台のスマホで仕事用番号とプライベートを完全分離

MOT/TELのアプリを従業員のスマートフォンにインストールするだけで、個人の電話番号はそのままに、仕事用の電話番号(会社の代表番号・内線番号)をアプリ上で利用できるようになります。

つまり、会社の電話は「MOT/TELアプリ」、プライベートの電話は「通常の電話アプリ」と、1台のスマホの中で完全に住み分けが可能です。業務用のLINEやSMSに頼る必要がなくなり、シャドーITの問題を根本から解消できます。

MOT/TELで実現する「通信の分離」

仕事の電話:MOT/TELアプリで発着信 → 勤怠連動で自動制御が可能
プライベートの電話:通常の電話アプリ → 一切影響を受けない
個人のLINE・SNS:業務連絡に使う必要がなくなり、完全にプライベート専用に

解決策②:勤怠管理連動で着信を自動制御

さらにMOT/TELは、自社の勤怠管理システム「MOT勤怠管理」と連携し、打刻ステータス(有給・退勤・休日・未出勤)に合わせて仕事用電話の着信を自動でブロックできます。

勤怠ステータス 着信制御 発信者への表示
退勤打刻済み 内線・外線・非通知を自動ブロック 「退勤済み」と表示
有給休暇(承認済み) 終日自動ブロック 「有休」と表示
休日 終日自動ブロック 「休日」と表示
未出社(始業前) 出勤打刻まで自動ブロック 「未出社」と表示

従来は各従業員が手動で着信拒否を設定する必要がありましたが、MOT勤怠管理との連携なら打刻や休暇申請をするだけで自動的にオン・オフが切り替わるため、設定忘れや手間が一切不要です。

発信者にもメリットがある仕組み

着信拒否中の従業員に電話をかけた場合、発信者のスマートフォン画面に「有給休暇中」「退勤済み」などの勤務状況がリアルタイムで表示されます。電話に出られない理由がすぐにわかるため、無駄な発信を防ぎ、最適なタイミングでの再連絡を促すことができます。

「真のつながらない権利」が実現する仕組み

第1の壁(通信の分離):MOT/TELアプリにより、1台のスマホ内で仕事用とプライベート用の通信を完全に分離。個人LINEへの業務連絡が不要になる。

第2の壁(自動制御):勤怠管理連動により、退勤・有給・休日には仕事用電話が自動でOFF。人の意識やルールに頼ることなく、システムが物理的に「つながらない状態」を保障する。

この「通信の分離」+「勤怠連動の自動制御」の二重構造により、ルールだけでは実現できなかった「真のつながらない権利」が初めて可能になります。

勤怠管理連携による自動着信拒否の詳細は下記のページをご覧ください。


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12. つながらない権利に関するよくある質問(FAQ)

Q1. つながらない権利は日本でいつから法制化されますか?

2026年通常国会への法案提出は見送りとなりました(2025年12月26日発表)。ただし、改正の方向性は白紙ではなく、労働政策審議会での審議は継続中です。現時点では2027年通常国会での法案提出・2027年以降の段階的施行が見通しとされています。

Q2. つながらない権利は管理職にも適用されますか?

海外の法制化事例(フランス・オーストラリアなど)では、管理職を例外としない全従業員対象が主流です。日本でも管理職を含めた議論が行われており、管理職も対象とすべきという方向性が強まっています。ただし、経営層や緊急対応の責任者には一定の例外を設ける必要がある場合もあり、役職ごとに対応範囲を明確にすることが重要です。

Q3. 緊急時でも勤務時間外の連絡は一切禁止されるのですか?

いいえ、つながらない権利はすべての連絡を禁止するものではありません。各国の法制化事例でも、一律の遮断ではなく労使協議によるルール策定が主流です。「人命に関わる事態」「事業継続が不可能になる障害」など緊急時の定義を明文化し、緊急連絡の手段と当番制を整備することが推奨されています。

Q4. 法改正が見送りになったのに、今から対策する必要はありますか?

はい、3つの理由で対策は急務です。①改正の議論は継続しており、2027年以降に施行される見込みです。法案成立から施行まで1〜2年の準備期間が必要なため、今から動くことが重要です。②既に厚生労働省のテレワークガイドライン(2021年改定)で「時間外の連絡に対応しなかったことを理由とする不利益な人事評価は不適切」と明記されています。③未払い残業代の請求やパワハラ認定のリスクは、法改正の有無に関わらず現行法の下で既に存在します。

Q5. 個人スマホ(BYOD)で業務連絡をしている場合、どう対策すればよいですか?

ルール(社内規定)だけでは限界があります。個人のスマホに業務アプリが入っている限り、退勤後もプライベート空間に仕事の通知が飛び込む状態は解消できません。クラウドPBX「MOT/TEL」のようなシステムを使えば、1台のスマホの中で仕事用とプライベート用の通信を完全に分離でき、さらに勤怠管理と連動して退勤後・休日の着信を自動でブロックすることが可能です。

Q6. つながらない権利のガイドラインは厚生労働省から出ていますか?

つながらない権利に特化した独立したガイドラインは、2026年3月時点ではまだ策定されていません。ただし、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年改定)では、勤務時間外の連絡への不対応を理由とした不利益評価は不適切との見解が示されています。労働基準関係法制研究会の報告書(2025年1月)では、ガイドライン策定等の積極的な方策を検討すべきと提言されており、今後の策定が見込まれています。

13. まとめ:法改正を「待つ」のではなく「先取り」する

つながらない権利は、もはや海外だけのトレンドではありません。2026年通常国会への法案提出は見送りとなりましたが、改正の方向性は変わっておらず、2027年以降の施行が見込まれている今、日本の企業にとっても現実的かつ喫緊のテーマです。

しかし、本記事で解説したとおり、ルールを作るだけでは「つながらない権利」は実現しません。従業員の個人スマホに業務連絡が流れ込む環境を放置したままでは、どれほど立派なガイドラインを策定しても形骸化するのは目に見えています。

真の解決には、以下の3つを同時に進める必要があります。

ルールの整備:社内ガイドライン・緊急連絡体制・管理職の例外規定を明文化する
通信の分離:業務の電話・連絡を個人のプライベート空間から切り離す仕組みを導入する
自動制御:勤怠管理と連動して、退勤後・休日の着信をシステムが自動でブロックする

クラウドPBX「MOT/TEL」は、②と③を1つのサービスで実現できる、通信システムの専門ベンダーだからこそ提供できるソリューションです。

法改正が見送りとなった今こそ、余裕をもって準備を進められる「猶予期間」です。後から慌てるのではなく、今からできることを始めてみませんか。

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参考文献

・連合「つながらない権利に関する調査2023」[リンク]

・厚生労働省「労働基準関係法制研究会 報告書」(2025年1月)[リンク]

・第204回 労働政策審議会 労働条件分科会 議事録(2025年10月27日)[リンク]

・厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年改定)[リンク]

・厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」[リンク]

・JILPT 労働政策フォーラム「ICTの発展と労働時間政策の課題」(2024年9月)[リンク]

・厚生労働省「労働時間制度等に関するアンケート調査」(令和5年)[リンク]

※本記事の内容は2026年3月時点の情報に基づいています。法改正の審議状況は変動する可能性があるため、最新情報は厚生労働省 労働条件分科会のページでご確認ください。


投稿日: 2026年04月07日、
カテゴリー: テレワーク|ブログ
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