2023年2月22日
2023年の4月から、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられることになりました。
大企業では2010年4月より適用されていましたが、13年の猶予を経て中小企業でも50%の割増賃金率になります。
当記事では、割増賃金率の引き上げに関する基礎知識を解説。中小企業が今すべき残業対策について紹介します。
2010年4月に改正労働基準法が施行され、月60時間を超える時間外労働に対し、50%の割増賃金を支払うよう義務づけられました。
中小企業では人件費削減についての対応を迅速に行うことが困難とされ、経済的負担を考慮し猶予措置として25%に据え置きとされていました。しかし、13年間という時間を経て、2023年4月から中小企業でも割増賃金が50%へと引き上げられます。
厚生労働省の資料では「労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、 1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率を5割以上に引き上げます。」と記載されています。
現行制度と改正後の割増賃金率は以下の通りです。
会社は、労働者に法定労働時間を超える時間外労働を課した際や、深夜労働・法定休日労働をさせた際には、一定の割増賃金を支払わなければなりません。
その際の割増率を割増賃金率といい、労働基準法に下記のように定められています。
労働基準法 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
残業とは、従業員が就業規則で定められた労働時間を超過して働くことを指します。
具体的には、定時を超えて働いたり、週の所定労働時間を超えて働いたりすることです。
一口に残業といっても、「法定内残業」と「法定外残業」の2つの種類があり、割増賃金の適用状況が異なります。
残業が法定内か法定外かによって割増賃金の支給義務が異なるため、企業は法定内残業か法定外残業かを把握しなければなりません。
法定内残業に対しては割増賃金を支給する必要はありませんが、法定外残業に対しては割増賃金の支給が法律で義務付けられています。
種類の残業のうち、法定外残業に対しては割増賃金の支給が法律で義務づけられていることを紹介しました。
ここからは、2023年4月から具体的にはどれだけの変化が起きるのかを具体的な例を用いて解説します。
例えば80時間の時間外労働を行なった場合、60時間までは従来通りの25%、残りの20時間に50%の割増賃金が適応されることになります。
時給を1,500円とした場合、改正前は80時間分(25%)=150,000円の残業代が発生します。
改正後は、60時間分(25%)112,500円+20時間分(50%)45,000円=157,500円で、従来よりも7,500円の割増賃金が上乗せされる計算になります。
割増賃金率の引き上げは「月60時間を超える法定外残業に対して」であるため、給与計算時には60時間以内とそれ以上の残業時間を分けて計算することが大切です。
休日や深夜などの労働時間帯に残業が被っている場合は、別途計算しなおす必要があります。
22:00~5:00までの深夜帯に60時間以上の残業を行う場合は、深夜割増賃金率の25%+60時間以上の割増賃金率の50%=75%、60時間以下の場合は深夜割増賃金率の25%+60時間以上の割増賃金率の25%=50%となります。
休日労働の場合は時間外労働とは区別されており、法定休日労働の割増賃金率「35%」となります。
平日と休日、深夜時間帯の区別と合わせて時間外労働時間が60時間以内か60時間以上かも含めて正確に計算する必要があります。
(ここでの休日とは1週間に1日、または4週間に4回の付与しなければならない。「法定休日」のことを指します。)
時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金を支払わなかった場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法119条1項1号)。
会社や経営者が罰則を受けるだけでなく、直接指揮命令をする責任者が罰則の対象になるケースもあります。
割増賃金率の変化による人件費の変化について解説してきましたが、本来残業はない方がいいものです。
残業を減らすことによる企業と従業員双方にとってのメリットを解説します。
一般的に、残業が多い企業は社会的に評価されません。
長時間労働の改善に取り組み、残業削減に成功した企業として社会的信用が上がります。
残業の多い会社は、なかなか人材が定着しない傾向にあります。
残業がない・少ないのであれば働きやすい会社として従業員の離職率が下がります。
仕事に優先順位をつけて、業務の効率化を図らなければ限られた時間内で成果を出すことはできません。
業務効率化が実現すれば、残業削減だけではなく、生産性向上も期待できます。
残業していた分、プライベートを充実させる時間が生まれます。
自分のライフワークバランスが整うので自然と仕事へのモチベーションが上がります。
残業削減によって、今までに支払っていた残業代がなくなるため、大きなメリットがあります。
残業削減は、会社の経費を節約できるだけではなく、従業員の負担を軽減できるという双方にとってメリットの大きいものです。
残業を減らすために、まずは残業が発生する原因を特定しましょう。よくあるケースとしては、以下のような原因が考えられます。
従業員数と業務量が釣り合っておらず、業務時間内に仕事を終わらせられないケースは多いです。
労働人口の減少により各企業が人手不足に苦しんでおり、1人あたりの業務量は増加しています。
残業代をもらって給与を上げようと考える従業員もいるかもしれません。
日本では長年給与水準が変わらず、一方で物価は上昇し続けることから、将来の生活に不安を抱える人が増加しています。
生活費を稼ぐために少しでも給与を上げたいと考える従業員も少なからずいるでしょう。
夜遅くまで働いていること、長く働くことが美徳とされているケースがあります。
実際に、数十年前までは残業している人を「頑張っている」「会社に尽くしている」と評価をしていたこともあり、そのような考えが現在まで残っている企業もあります。
このような要因を理解した上で自社にあった方法で残業を削減することが重要です。
ここからは、残業を減らすための具体的な対策をご紹介します。
まずは、従業員がどれだけ残業を行っているのか適切に把握する必要があります。
勤怠管理システムなどを導入し、毎日の打刻を行うことによって業務時間を可視化。
管理者が業務時間を把握できることに加え、従業員自身も自分が毎日どれだけの時間を業務に費やしているのか改めて実感することができます。
時間に対する意識が芽生え、業務効率アップ・残業削減に効果的です。
残業を減らすよう呼び掛けていても、上司が遅くまで残っていては社員の時間意識は薄くなります。
また、上司よりも先に帰るのは気が引けるという従業員も多くいるため、上司が積極的に定時退社をする必要があります。
ノー残業デーとは、全社的に残業禁止の日を設け、業務効率アップを目指す取り組みのこと。
ノー残業デーには全社的に残業ができなくなり、「他の人よりも早く帰るのは気が引ける」という定時退社するための心理的なハードルを下げることができます。
また、業務を早く終わらせることによって実現できる生活を体感することもでき、日常業務のなかで業務効率を上げるためのモチベーションにもなるでしょう。
週に1回程度の頻度でノー残業デーを設けている企業が多いようですが、業務内容や繁忙期は部署ごとに大きく異なります。
企業全体で固定の日にノー残業デーを押し付けるのではなく、現場の状況にあった運用を心掛けましょう。
残業が必要な場合には、事前に上司の許可を得る制度です。
部下の残業を抑制できるほか、上司が部下の業務進捗度合を把握することが可能です。
業務量が多すぎる場合には他のメンバーに割り振るなど、調整することができます。
評価基準を見直すことも、残業を減らす効果があります。
例えば、これまで残業による長時間労働を評価していた企業が、「どれだけ長く働いたか」ではなく、「どのような成果を出したか」に注目して評価することを指します。
長時間労働が習慣化して定時退社の意識が薄かったり、長く働くことが美徳とされていたりするような企業であれば、評価基準を改めることで残業を削減できるでしょう。
従業員が行う必要のない業務に時間を奪われてはいませんか?
従業員はコア業務に集中、ほかの業務をアウトソーシングすることで、勤務時間を適切な業務に費やすことができます。
人件費よりもアウトソーシングする費用の方がお得である場合もあり、雑務に時間をとられている企業におすすめです。
残業代を稼ぐために、習慣的に残業を行っている従業員もいるかもしれません。
そのようなケースでは、残業禁止のルールを設けることで、生産性高く働かざるを得なくなります。
余計な残業代を支給する必要がなくなったり、生産性向上を意識して働くようになったりするメリットがありますが、実際に運用する際には注意が必要です。
なぜなら、こうしたルールは「業務量が適切であること」が大前提であるからです。
業務時間に対して任せる業務量は適切か、残業を禁止にして従業員の精神面の負担にならないか調整が必要です。
業務量が適切でないと、「残業が禁止だから」と業務を持ち帰る従業員が出てくるかもしれません。
マネジメント・セキュリティの観点で問題が発生する恐れがあるため、実態を逐一把握する必要があります。
また、近年普及したリモートワークでは、従業員の労働状況が分かりにくいという課題があります。
こまめな連絡で実態を把握することはもちろん、残業を申請制にするなど働き方に合わせたルール作りが必要です。
様々なルールや取り組みを紹介してきましたが、ルール作りや従業員個人の能力・努力だけで減らせる残業には限度があります。
従業員の勤務時間や業務状況を管理するシステムを導入することで、残業を減らすために業務量を調節したり、業務をスムーズに進めるための手助けができたりします。
次の章では、従業員の業務状況を把握するためのシステムをご紹介します。
1日8時間・1週40時間を超えて時間外労働を行う場合、事前に残業申請が行われる必要があります。
慢性的に申請のない残業が行われていると、社員ごとの正しい残業時間を把握できず、割増賃金を正しく計算することもできなくなります。
「MOT勤怠管理システム」では、スマホ・PCから簡単に打刻が可能です。規定時間を超えた残業時間や深夜残業、休日出勤時間などをそれぞれ自動で計算するため、給与計算の手間を大幅に削減することが可能です。
また、システム上で残業申請も可能。メールまたはチャットで上長へ申請され、システム上で承認・却下の決裁を行うことができます。
規定の時間を超えて残業を行う従業員に対しては、本人と管理者にアラートが通知されます。時間を意識した業務遂行が可能になります。
コロナ禍で急速に普及したテレワーク。3年が経過した今もテレワークを継続している企業は多く、人材を確保するためにも引き続き導入企業は拡大すると考えられています。
しかし、テレワーク中の従業員に対して、以下のような課題を抱える企業がいることも事実です。
・日報だけでは作業が把握できない:テレワークで日報は毎日提出してもらっているけれど、時間内に仕事を行っているかわからない。
・データ流出が心配:個人情報をダウンロードしたり、持ち出していないかチェックができない。
・生産性(成果)が上がらない:出社はしているが、働いている時間のわりに成果が出にくい。
こうした課題に対して、従業員の業務を見える化するのがPCログ管理システム「MOT/Log」です。
◆機能
PCの操作履歴を画面キャプチャで確認。
定期的(1分/ 3分/ 5分/ 10分/ 15分/ 30分/ 1時間/ ランダム)に社員パソコンの画面キャプチャを自動取得し、管理者画面で確認することができます。
効果① PC作業時間を可視化
・ムダな作業を発見し、業務効率化に。
・一人への業務集中化を避け、公平な作業分担の公平化。
・間接人員の成果評価に。
効果② 働きすぎを防止
・PC作業時間をグラフ化し、一目で把握。
・終業時間になると強制シャットダウン。
・隠れた残業を発見し、燃え尽き、離職を防ぐ。
効果③ 情報漏えい対策
・画面キャプチャを定期的に取得。
・データの持ち出しをけん制。
・リモートワークでのデータコピーを禁止。
社員への取次ぎや営業電話への対応など、電話対応業務は意外と時間がかかるもの。
電話対応をアウトソーシングすることで、コア業務に集中できるようになります。